テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

「これを若さまにお返ししようと思って」
 差し出された巾着を見、彼は男性にしてはやや細く薄い眉をつり上げた。
「その理由を訊いても良い?」
「若さまが私に真心を下さっても、私は若さまに真心をお返しできません」
「それが僕のあげた耳飾りを返す理由なの?」
「はい。―ごめんなさい」
「謝らなくて良いよ」
 ウォンジュンはどこか淋しげに見える笑みを浮かべた。
「誰かが誰かを好きになる気持ちを止められないのと同じで、幾ら僕が君を好きだと言っても、君に僕を好きになってくれと強引に頼むことはできないものね」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ