
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか
李家の屋敷を出たキョンシルが次に目指したのは海辺―浜木綿が群れ咲くお気に入りの場所であった。一度離れてしまえば、もう二度と、この海辺の町に来ることはないだろう。ならば、ひとめ、あの場所を見ておきたい。大好きな男と過ごした大好きな場所を記憶にとどめておきたい。
昼前にここを発てば、女の脚でも夕刻までには次の町に辿り着けるはずだ。夏の陽は長いから、そう焦る必要もない。二度と訪れることもない土地なら、悔いのないように至福のときを過ごした想い出の数々をきちんとこの眼で確認してから旅立ちたい。
昼前にここを発てば、女の脚でも夕刻までには次の町に辿り着けるはずだ。夏の陽は長いから、そう焦る必要もない。二度と訪れることもない土地なら、悔いのないように至福のときを過ごした想い出の数々をきちんとこの眼で確認してから旅立ちたい。
