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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

 トスは長い間しまいこんでいた記憶を探り当てようとするかのようにキョンシルに眼を凝らした。
「俺は人を殺したんだぞ。人殺しは世間では立派な犯罪だ」
 吐いて棄てるような言い方にキョンシルの方が哀しくなる。
「トスおじさんの場合は人殺しなんかじゃないわ。仕方がなかったのに」
 トスは両手のひらをひろげ、眼の前にかざした。裏返したり元に戻したりしながら、しげしげと自分の手を眺める。
「この手は人の血に染まっているんだ」
「仕方なかったのよ。トスおじさんのせいじゃないわ」

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