側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか
そのことは先刻、シヨンと話しているときにも感じたことだ。シヨンは、薄紅の花びらを水に落としたような儚い美しさを持っている。だが、その中には両班家の息女としての凜とした心が秘められている。仮に十五年前、阻む者がなくチョンスに辱められていたとしたら、身重のまま自ら生命を絶ったであろうことは容易に想像できた。
「シヨンさんを助けるためには、チョンスさんと闘うしかなかった。その最中にあんなことが起こるなんて、誰も考えもしなかったはずよ。ましてや、トスおじさんは最初からチョンスさんと剣を交えるつもりはなかったんだもの」
「―」
トスがその場に膝をついた。両眼を閉じ、何かに祈るような表情でうつむいている。固く瞑った双眸から、ひとしずくの涙が流れ落ちた。
「シヨンさんを助けるためには、チョンスさんと闘うしかなかった。その最中にあんなことが起こるなんて、誰も考えもしなかったはずよ。ましてや、トスおじさんは最初からチョンスさんと剣を交えるつもりはなかったんだもの」
「―」
トスがその場に膝をついた。両眼を閉じ、何かに祈るような表情でうつむいている。固く瞑った双眸から、ひとしずくの涙が流れ落ちた。