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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第12章 第二話 【はまなすの咲く町から】 心のありか

―お母さん。ごめんなさい。そして、ありがとう。
 キョンシルの瞼に母の美しい笑顔が束の間、浮かんで消えた。たとえ母が許してくれなくても、もう自分は後戻りはできない。二度と、この手の温もりを失いたくはない。
 浜木綿の清しい白さが涙の滲んだ眼に眩しい。
 重ね合った手のひらから、ほのかな温もりが生まれる。ずっと止まったままであったトスの時間が今また、この海辺の町で流れ始めたのをキョンシルは感じ取っていた。
                  (第二話 【はまゆうの咲く町から】おわり)

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