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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 出逢いはある日、突然に

 声高に客を呼び集める物売りたちの声が飛び交う中、卿(キヨン)実(シル)は周囲に物珍しげな視線を投げる。生きたままの鶏を売る店、良い匂いの漂ってくる点心(揚げ菓子)や蒸し饅頭などの食べ物屋、更には青銅の鏡を売る小間物屋。
 久方ぶりに眼にする都は、かつて暮らしていた頃よりも更に活気に溢れ賑わっているように見えた。
「お嬢さん、この鏡は昨日、入荷したばかりの新品だ。名はあまり知られていないが、なかなかの腕を持つ職人が拵えたんだよ。一つ、どうだい? これを持ってりゃア、あんたの美しさにも更に磨きがかかること間違いなしさ!」

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