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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 キョンシルの持ち前の義侠心に火が付いた。両班の若者は年齢、十八歳くらい。背格好は高すぎもせず低すぎもしないが、意外に整った細面の男前である。かなりの家の子息らしく、薄紫のパジチョゴリは絹でしっとりとした光沢を放っている。鐔広の帽子から垂れ下がる服と同色の玉(ぎよく)もかなりの値の張りそうなものだ。
 若者はソマニに相当痛めつけられたようで、白皙の美貌には青あざが幾つもでき、唇だけでなく鼻からも出血している。
「ちょっと、あなた」
 腰に両手を当て仁王立ちになると、そこら辺に響き渡る大音声で叫ぶ。ソマニがキョンシルを一瞥し、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

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