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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

「あーあ、とんだお節介焼きの娘っこだぜ。あんな細腕でソマニに勝つわけもないのによ」
 キョンシルは幾重にもなった人の輪を押しのけながら言った。
「ごめんなさい、ちょっと通して」
 皆が訝しげな顔ながらも、すっと脇に寄ってくれる。皆、面白半分で見せ物のように両班の若者と火龍のソマニの取っ組み合いを見物しているだけで、仲裁に入ろうなどという勇気のある輩は一人もいないらしい。
 とうとう最前列の一人を押しのけて先頭に出たキョンシルが見たのは、到底、取っ組み合いとは言えないものだった。まさに片方が一方的に相手を打ちのめしているだけ―、平たくいえば弱い者苛めだ。

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