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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 キョンシルはムッとしてソマニを見た。
「何がおかしいの?」
「名乗るほどの者じゃないって? 一体、自分が何さまだと思ってるんだ? 王さまの娘じゃあるまいに、格好つけてるんじゃねえ」
「それでは、あなたに訊くわ。その人が何をしたといって、そこまで乱暴するの?」
 ソマニはペッと唾を吐き出した。
「ガキを―大胆にも俺の懐から財布を盗もうとした掏摸のガキに俺が仕置きをしようとしてたら、こいつが現れて邪魔しやがったのさ」
「では、この人は子どもを庇ったのね」
「チッ、子ども、子どもと言うが、十二にもなってりゃア、ひとかどの大人並みに分別はあるってものじゃねえか。なのに、あのガキは他人(ひと)さまの財布に手をつけやがったぞ」

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