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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

「そなた、私は断じて狂人などではないぞ、無礼な」
 流石に怒っているようだが、キョンシルは構わず彼の手を引いて進んだ。
「判ってますよ。若さまは、お金の使い方をご存じないんでしょ?」
 キョンシルが小声で囁くと、若者は不思議そうに眼をまたたかせる。
「金の使い方? それは何の話だ?」
 もう目眩がしてきた。キョンシルは額に手を当て、しばらく深呼吸して気を落ち着けた。正義感の強い優しい若さまだが、どうやら、とんでもない世間知らずであることは確かなようだ。ただ、一つだけ解せないことがあった。

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