
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に
「若さま、一つだけお訊きしますが、お金の使い方もご存じないのに、どうして、生活に困っているあの子どもにお金を上げたりしたんです?」
生活に困窮している―、即ち、金が必要だという思考回路は、金の使い方を知らない若さまにしては不自然に思えたのだ。
若者の声が小さくなった。それまでの堂々とした物言いが嘘のように、自信なさげに言う。
「それは内官(ネガン)、いや、爺やが言っていたのだ。町に出ることは認められないが、もし、どうしても一人で出かけたときには、困れば、あの巾着を使え。あれを見せれば、大概の者は便宜を図ってくれるだろうと。ゆえに、あの子どもが困っているようだから、巾着を渡した」
生活に困窮している―、即ち、金が必要だという思考回路は、金の使い方を知らない若さまにしては不自然に思えたのだ。
若者の声が小さくなった。それまでの堂々とした物言いが嘘のように、自信なさげに言う。
「それは内官(ネガン)、いや、爺やが言っていたのだ。町に出ることは認められないが、もし、どうしても一人で出かけたときには、困れば、あの巾着を使え。あれを見せれば、大概の者は便宜を図ってくれるだろうと。ゆえに、あの子どもが困っているようだから、巾着を渡した」
