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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 その時、一陣の風が二人の間を吹き抜け、ミヨンの解き流した長い黒髪が宙に舞った。烈しい風に髪を嬲られながら、ミヨンの天女のような美貌が一瞬にして鬼女に変わる。まるで、芝居の一幕を見ているかのような変化(へんげ)であった。
―そうさ、お前は私を裏切った。私が死ねば、お前は晴れてトスを我が物にできる。だから、お前は邪魔者の私を見殺しにしたんだ。赤児のときから苦労して女手一つでお前を育てたこの母親を!
―違う、違うの、お母さん。私は絶対にお母さんを邪魔だなんて思ったことはない。むしろ、お母さんという恋人がいるトスおじさんを一方的に恋い慕う私の方が邪魔者だった。そんなことは言われなくても、私自身がよく知っていたわ。

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