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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

 母御を信じるのだ。ソンの言葉は、キョンシルの心の奥底に沈み、力強く温かなものを呼び覚ました。
 その時、キョンシルは改めて自分の直面する現実に気づいた。今、まさしく、我が身はソンの腕の中にいるのだ。見かけは細身だが、やはり男性らしく、腕には筋肉がついて肩幅も広く逞しい。
 こうして腕に抱きしめられていると、ソンのしなやかに引き締まった体躯がまざまざと感じられる。
「―!」
 狼狽えて身体を離そうとしたキョンシルに、ソンが耳許で囁いた。

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