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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に

「それ以上、もう何も言うな。ただの夢にすぎぬ悪しき幻に惑わされては、そなたの母御が哀しまれるぞ。そなたの母御であれば、やはり、そなたのように心優しく清らかな女人であっただろう。そのような人を死してまで苦しめたり貶めたりしてはならぬ。そなたのよく知っている母御を思い出し、母御を信じるのだ」
 キョンシルのよく知っている母は、自分自身には厳しかったけれど、娘のキョンシルにはどこまでも優しかった。そうだ、生前の母を思い出せば、今し方見たばかりの悪夢がただの夢にすぎないことが判るではないか!
 恐らく―キョンシルの心に根付く深い罪悪感が―たとえ、その気はなかったとしても、母の恋人を奪ったという事実が、キョンシルをして、あのような夢を見せたのだろう。

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