側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に
キョンシルがありったけの勇気をかき集め、そろそろと歩き出そうとしたその時。突如として鋭い切っ先が飛んできたように―キョンシルには思えた。が、現実には刃が飛んできたわけではなく、トスが剣先を前方へと繰り出したのだ。自然、ツと切っ先を喉元に突きつけられた形になる。
皮膚の真上ぎりぎりで剣先は制止している。少しでも切っ先がぶれでもしようものなら、キョンシルの薄い皮膚には紅く細い傷が走るだろう。なのに、現実には、傷一つ付いていない。まさに剣の達人でなければできない神業であった。
キョンシルは眼を軽く瞑り、深く腹の底から息を吸い込んだ。
「私を殺して気が済むのならば、好きにしてちょうだい」
皮膚の真上ぎりぎりで剣先は制止している。少しでも切っ先がぶれでもしようものなら、キョンシルの薄い皮膚には紅く細い傷が走るだろう。なのに、現実には、傷一つ付いていない。まさに剣の達人でなければできない神業であった。
キョンシルは眼を軽く瞑り、深く腹の底から息を吸い込んだ。
「私を殺して気が済むのならば、好きにしてちょうだい」