側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第13章 第三話 【むせび泣く月】 出逢いはある日、突然に
トスは相変わらず抑揚のない声で続ける。その無機質な声からは、彼の感情を推し量ることは至難の業であった。
「皮肉でも嫌がらせでもない。これは本心からの言葉だ。俺もついかっとなってしまったが、あれから一人で色々と考えてみた。やはり、そなたを幸せにするのは俺ではなく、そなたにふさわしい若い男だと気づいたよ。今の俺はあくまでも親父代わり、あいつがそなたを幸せにできる信頼するに足る男だと見極めがついたら、すぐにでも邪魔者は姿を消すさ」
トスは囁くように言うと、再び長剣の手入れに専念し始める。最早、彼の意識は眼前のキョンシルになど一切、向けられていないことは明白であった。
それ以上、何を言うすべもなく、キョンシルは踵を返すしかない。キョンシルの眼からは大粒の涙がひっきりなしに溢れ出していた。
「皮肉でも嫌がらせでもない。これは本心からの言葉だ。俺もついかっとなってしまったが、あれから一人で色々と考えてみた。やはり、そなたを幸せにするのは俺ではなく、そなたにふさわしい若い男だと気づいたよ。今の俺はあくまでも親父代わり、あいつがそなたを幸せにできる信頼するに足る男だと見極めがついたら、すぐにでも邪魔者は姿を消すさ」
トスは囁くように言うと、再び長剣の手入れに専念し始める。最早、彼の意識は眼前のキョンシルになど一切、向けられていないことは明白であった。
それ以上、何を言うすべもなく、キョンシルは踵を返すしかない。キョンシルの眼からは大粒の涙がひっきりなしに溢れ出していた。