側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
代書屋の主人ホンジュは五十年配の小太りの男だ。何でも昔は宮中の下っ端官僚であったらしいが、町で代書屋を開いてはや二十余年、仕事には結構口うるさい。その分、客からの信頼度も高く、それなりに繁盛していた。
最初、ホンジュはキョンシルの話に気乗りしない様子だった。それも無理からぬ話ではある。いきなり見知らぬ若い男を連れてこられ、〝ここで使ってくれ〟と言われたからといって、〝ああ、そうですか〟と頷けるはずもない。
―見たところ、いかにも両班の大切に育てられたお坊ちゃんといった風体だが、一体、どこのお屋敷の若さまを誑かしたんだ?
などと真顔で耳打ちされ、キョンシルは真っ赤になって憤慨した。
最初、ホンジュはキョンシルの話に気乗りしない様子だった。それも無理からぬ話ではある。いきなり見知らぬ若い男を連れてこられ、〝ここで使ってくれ〟と言われたからといって、〝ああ、そうですか〟と頷けるはずもない。
―見たところ、いかにも両班の大切に育てられたお坊ちゃんといった風体だが、一体、どこのお屋敷の若さまを誑かしたんだ?
などと真顔で耳打ちされ、キョンシルは真っ赤になって憤慨した。