側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
ソンは黙り込むと、先刻の元気はどこへやら、しきりに何か考え込んでいるようだ。
「皆がキョンシルのように私を理解してくれたなら」
言いかけ、口をつぐみ、更に何か言おうとしてまた黙った。
「ね。それよりも、あれを見て」
キョンシルが指を指す方向をつられるようにソンが見る。その先には、色鮮やかな絹の刺繍靴を並べた露店があった。
「素敵ねえ。私たち庶民にはそれこそ縁のない靴だけど、一生に一度くらいは履けるわ」
「一生に一度?」
訝しそうに訊ねられ、キョンシルは頷いた。
「そう、お嫁入りのときにね。もっとも、お嫁に貰ってくれる男(ひと)がいなければ、一生、履かずじまいで終わってしまうけど」
キョンシルが朗らかに言った。
「皆がキョンシルのように私を理解してくれたなら」
言いかけ、口をつぐみ、更に何か言おうとしてまた黙った。
「ね。それよりも、あれを見て」
キョンシルが指を指す方向をつられるようにソンが見る。その先には、色鮮やかな絹の刺繍靴を並べた露店があった。
「素敵ねえ。私たち庶民にはそれこそ縁のない靴だけど、一生に一度くらいは履けるわ」
「一生に一度?」
訝しそうに訊ねられ、キョンシルは頷いた。
「そう、お嫁入りのときにね。もっとも、お嫁に貰ってくれる男(ひと)がいなければ、一生、履かずじまいで終わってしまうけど」
キョンシルが朗らかに言った。