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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

 ソンがキョンシルの足許を見る。言葉通り、キョンシルが履いているのは草鞋であった。
 ソンは何を思ったか、急に早足で歩き始めた。
「店主、これを一つくれ」
 懐から出した巾着―、これはキョンシルが貸したものだ―から銭を取り出し、払っている。火龍のソマニの一件以来、キョンシルは買い物の仕方を知らないソンに、商品は代金を払って買い求めるものだということを懇切丁寧に教えたのだ。
 何とか買い物のすべを憶えてくれたのは嬉しいが、一体、あんな女物の靴を買って、どうするというのだろう。早婚の当時においても、両班のように身分が上になるほど、後嗣を得るために結婚は早かった。

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