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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

 本気だ。キョンシルは焦った。このままでは、老人は本当に自分の首をかき斬ってしまうに相違ない。狼狽えてソンを見ても、ソンはただ黙り込んで老人を静かに見つめているだけだ。
「ソン、この人、放っておいたら、本当に死んじゃうわ」
 ソンが嗜虐的な笑みで応える。
「シアンよ、脅せば、私が気持ちを変えるとでも?」
 老人は鹿爪らしい顔で首を振る。
「まさか、そのようなことは、ゆめ考えてはおりません。あなたさまが頑固なのは、ご幼少の頃からいつもお側にいる私が誰よりも存じ上げておりますゆえ。この皺首が一つ胴体から離れたところで、お気持ちが変わるなどとは思うてはおりませぬ」

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