側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
「それでは」
ホン・シアンと名乗った老人がすっくと立ち上がった。腰に佩(は)いた刀をスと抜くと、刃を自らの喉に当てる。あまりのなりゆきに、キョンシルは息を呑んだ。
「どうしても殿下がお帰りにならぬと仰せなら、どうか、ここで先に私をお斬り下さい。この国の父たる殿下が我が子である国民を放り出し、玉座を降りられる―、これは断じて許される行為ではございませぬ。その咎は殿下がご幼少の砌よりお側去らずでお仕えし、ご養育申し上げた私めの責任。すべての元凶の因(もと)である私をお斬り捨て下されば、殿下もこれで心置きなく市井で名もなき民として生きられましょう」
ホン・シアンと名乗った老人がすっくと立ち上がった。腰に佩(は)いた刀をスと抜くと、刃を自らの喉に当てる。あまりのなりゆきに、キョンシルは息を呑んだ。
「どうしても殿下がお帰りにならぬと仰せなら、どうか、ここで先に私をお斬り下さい。この国の父たる殿下が我が子である国民を放り出し、玉座を降りられる―、これは断じて許される行為ではございませぬ。その咎は殿下がご幼少の砌よりお側去らずでお仕えし、ご養育申し上げた私めの責任。すべての元凶の因(もと)である私をお斬り捨て下されば、殿下もこれで心置きなく市井で名もなき民として生きられましょう」