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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第3章 旅立ち

 それとも、トスは母に対してだけは、こんな表情を見せていたのだろうか。他の誰にも見せない顔を母はいつも独り占めしていた―。母の傍らで寛ぎ、男らしい優しい笑みを見せるトス、そんな彼を女らしい恥じらいと媚を含んだまなざしで見返す母。
 想像しただけで、キョンシルの胸がちくりと痛んだ。
「―ぼっち」
 思わず胸の想いがこぼれ落ちてしまったのを、耳聡いトスは聞き逃さなかった。
「キョンシル?」
 キョンシルの眼から一旦は止まっていた涙が溢れ出た。
「一人ぼっちよ。トスさん。私、とうとう一人になっちゃった。お母さんがいなくなった今、私に家族と呼べる人は誰もいない」

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