側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実
キョンシルはただ言葉もなく、遠ざかるソンの背中を見つめた。自分にはトスという想い人がいる。たとえトスが哀しい誤解をして、キョンシルから永遠に心が離れてしまったのだとしても、キョンシルがトスを嫌いになることはない。
だが、仮にトスと出逢う前にソンと出逢っていたなら、自分は果たして、どちらを愛したのだろう? いや、そんなことを考えてしまうこと自体がトスへの裏切りなのかもしれない。
ソンのすぐ後ろをホン・シアンがぴったりと影のように付き従ってゆく。二人の姿は直に往来を行き交う人波に呑まれ、見えなくなった。
だが、仮にトスと出逢う前にソンと出逢っていたなら、自分は果たして、どちらを愛したのだろう? いや、そんなことを考えてしまうこと自体がトスへの裏切りなのかもしれない。
ソンのすぐ後ろをホン・シアンがぴったりと影のように付き従ってゆく。二人の姿は直に往来を行き交う人波に呑まれ、見えなくなった。