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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第14章 第三話 【むせび泣く月】 意外な事実

 キョンシルは緩慢な動作で、二人が去ったのとは逆方向に歩き始めた。そう、この国の王と常民にすぎないキョンシルでは住む世界が違いすぎる。
 目抜き通りを抜け、狭い横道に入ると、めっきりと人通りは減った。ここら界隈は町ももう外れになり、昼間でもあまり人は見かけない。トスとキョンシルの家は間近である。
 今夜の夕飯は何しようかと、ぼんやり考えてみるけれど、何も浮かばない。あまりに非現実的な出来事に思考がついてゆけてないのだ。ソンの優雅な物腰、学識・教養の高さから、かなりの家の息子だろうと推測はしていたものの、まさか国王だったとは―。まさに、青天の霹靂だった。

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