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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 そんな彼を暗闇の底から救ったのが、キョンシルだった。
―もう、そろそろ自分を許してあげて。トスおじさんは十分苦しんだわ。
 今、彼が仏像を彫る意味合いは昔とは違う。しかし、たとえ罪に苛まれずとも、自らが人ひとりの生命を奪ったという事実だけは忘れまいと心に誓っているトスである。
 こうやって一心に仏を造り続け、拵えた仏はどれほどの数になるのだろうか。何体の仏を刻んだとて、罪が消えるものではないが、それでも、亡き人―この場合、チャンスだけでなく、かつて愛した女、キョンシルの母ミヨンも含まれている―たちの魂が幾ばくかでも鎮められたら良いと願わずにはいられなかった。

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