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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 王宮という名の伏魔殿

 地面に秋の陽が温かな陽溜まりを作っている。トスが用心棒を務める商家、チョ・ソンスの屋敷の庭は今、まさに秋の季節を迎えようとしていた。トスの前方には薄紅色の撫子がひと群れ、ゆるやかな風にそよいでいる。
 トスは先刻から、庭先で一心に仏を彫っていた。彼が小さな木彫りの観音像を彫るのは、誤って殺してしまった親友昌秀(チヤンス)の弔いのためでもあった。やはり幼なじみの女性信(シ)蓮(ヨン)を犯そうとしたチャンスを止めるつもりだったのに、その最中、トスはチャンスを剣で傷つけ、殺した。たとえ故意ではなくとも、友人を殺めた罪に変わりはない。トスはもう長らく良心の呵責に苛まれてきた。

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