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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

―キョンシルっ。
 トスは連れ去られようとするキョンシルに手を伸ばすが、まるで金縛りにでもあったように、身体が固まって身動きがままならない。
 彼がもがいている間に、キョンシルは黒い大きな影に連れ去られてしまった。
 ハッと目覚めた時、トスは汗びっしょりになっていた。キョンシルに何が起こったというのだろうか。彼の勘では、やはり、ソンという得体の知れぬ男が拘わっているとしか思えない。しかし、あの若者はキョンシルが否と言えば、強引に攫ってゆくような性悪ではないはずだが―。ソンから感じられる惛い翳りは何もソン自身のせいではない。

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