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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 では、その理由はと問われれば、はきとは応えられない。が、キョンシルは道理をわきまえた娘だ。何しろ、あのミヨンの娘なのだから。
 出てゆくにしろ、何か自分に告げてから去るだろう。キョンシルが走り書きすら残さずかき消すようにいなくなったことに、トスは大きな不安を憶えた。
 いつまでも帰らぬキョンシルを待ち続けている中に、トスは浅い微睡(まどろ)みに落ちていたらしい。トスは眠りながら、夢を見ていた。
 何者かがキョンシルを連れ去ろうとしている。
―トスおじさん、助けてッ。私はここにいるの、助けて。
 キョンシルの悲鳴が耳をつんざき、トスの心を引き裂いた。

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