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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 キョンシルは所在なげにうつむいたきり、顔も上げられなかった。突如として町外れで拉致され、意識を失ってしまった。次に目覚めたときは、見知らぬ場所に連れ込まれていた。そこは途方もなく広く、市井で生まれ育ったキョンシルが想像したこともないような煌びやかなところだった。
 見たこともない室には豪奢な飾り付けが施され、キョンシルは立派な絹の布団で目覚めたのだ。一室といえども、キョンシルの家が丸ごと入るよりも更に広い。
 キョンシルが目覚めるのを待っていたかのように扉が開き、静々と女官が入ってきて、キョンシルは長く磨き抜かれた廊下を通って、いずこかに連れてゆかれた。

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