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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 ここは国王の居室なのだろうか。先刻、色の白い男が確か〝国王殿下〟と呼びかけていたような気がする。
 でも、何故、この自分が国王の部屋に?
 大いに当惑していると、すぐ後ろで声が聞こえた。
「キョンシル」
「―!」
 愕いて飛び上がった。恐る恐る振り向けば、懐かしいよく知った顔が間近にあった。
「ソン」
 ホッとして思わず安堵の表情を浮かべる。
「本当はソンだなんて、気安く呼んでは駄目なのよね」
 微笑んで言うと、ソンは笑った。
「全然。私の名前はイ・ソンなのだから、ソンと呼んでくれて構わないよ」

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