側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
まだ十二、三歳くらいまで、キョンシルはトスを〝おじさん〟と呼んでいた。それが〝トスさん〟と呼ぶようになったのは、一体いつ頃だったのか。もう、自分でも思い出せないほど昔のことのように思える。
トスにいつまでも子ども扱いして欲しくなくて、自分も母と同じ大人の女なのだと認めて貰いたくて、ある日突然、わざと呼び方を変えたのだ。
最初の中、トスは随分と戸惑い
―随分と他人行儀に聞こえる呼び方だな。
と渋い貌をしたものだった。それでも、キョンシルはトスを二度と〝おじさん〟とは呼ばなかった。
だが、あれから更に刻を経た今でもなお、トスの瞳に映じるキョンシルは依然として十一歳の子どものままなのだろう。
トスにいつまでも子ども扱いして欲しくなくて、自分も母と同じ大人の女なのだと認めて貰いたくて、ある日突然、わざと呼び方を変えたのだ。
最初の中、トスは随分と戸惑い
―随分と他人行儀に聞こえる呼び方だな。
と渋い貌をしたものだった。それでも、キョンシルはトスを二度と〝おじさん〟とは呼ばなかった。
だが、あれから更に刻を経た今でもなお、トスの瞳に映じるキョンシルは依然として十一歳の子どものままなのだろう。