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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 その途端に、ソンの端正な顔がさっと翳った。
「ごめん。私もまさか、こんなことになっているとは考えもしなかったんだ。宮殿に戻ってからすぐに、今宵は新しい妃をお召し下さいと言われたけど、その妃というのがキョンシルだなんて想像もつかなかった」
 ソンの言葉に、キョンシルは眼を剥いた。
「ちょっと待って。ソン、今、何て言ったの? お妃って、どういうこと?」
「それは、私が知りたいくらいだ」
 ソンは弱り切ったように言い、首を振る。
「恐らく、ホン内官の仕業だろうな」
「ホン内官―、あの爺やさんね」
 背の高いかくしゃくとした老人を思い出す。

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