テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

 ところが、である。あろうことか、大妃は手にした茘枝をいきなりキョンシル向かって投げつけたのだ。
 あっと、背後の臨尚宮が小さな悲鳴を上げた。
 よほど力を込めたのか、茘枝はキョンシルの牡丹色のチマに当たって弾け、チマは茘枝の汁とグチャグチャになった実で見るも無惨に汚れた。
「何ということを」
 臨尚宮の呟きを、大妃が見逃すはずはなかった。再び柳眉がつり上がる。
「臨尚宮。そなた、今、何と申した?」
「―申し訳ございませぬ。大妃さま、すべては私の失態にございます」
 キョンシルはすかさず割って入った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ