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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第15章 王宮という名の伏魔殿

「淑媛の失態は、これ即ち、お付きの臨尚宮、そなたの失態ぞ。後宮仕えも長いそなたが何ゆえ、気づかなかったのだ? 私の妹の一人が清国の王族に嫁いでいるのを忘れたか? 茘枝なぞ、妹から再々送られてくるから、特に珍しうもない」
 大妃は横柄に顎をしゃくった。
「その茘枝を見せてみよ」
 茘枝の入った籠を持っていた女官が慌てて立ち上がる。臨尚宮が頷くと、女官は恐る恐る籠をキョンシルに渡した。
 キョンシルは籠を受け取り、静かに膝をいざり進める。籠ごと差し出すと、大妃はいちばん上の茘枝を手に取った。
 手のひらに乗せ、しげしげと眺めている。キョンシルも大人しく大妃の反応を待った。

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