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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 飛翔する鳥

 しかしながら、キョンシルがソンに胸の内を話す機会はなかなか巡ってこなかった。初めて寝所に召されて以後も、彼女は夜毎、大殿の王の寝所に召された。むろん、共に枕を並べて眠るというただそれだけのことにすぎず、ソンはキョンシルの意思を尊重してくれる。最初に宣言したとおり、指一本触れようとはしない。
 ソンの一日は実に多忙を極めていた。大臣たちからの政務報告を受け、会議に出席し、地方から上がってきた報告書すべてに眼を通す。庶民のキョンシルには想像のできないほどの大変さであり、王の仕事がここまで大変だとは考えたこともなかった。

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