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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 が、ソンはどんなに忙しくても、昼間は必ず一度、キョンシルのに殿舎を訪れた。臨尚宮から教わったソンの好物だという石榴(ざくろ)茶を淹れると、ソンは殊の外歓ぶ。屈託ないその笑顔を見ていると、到底、多忙な政務の合間を縫って息抜きにきたソンに、酷いことは言えなかった。
 では夜ならば話せるかといえば、確かに寝所で二人きりにはなれる。ソンは、その日にあった出来事を愉しげに話すのが日課だ。
 ある夜はこんなことがあった。
―ゆえに、左(チヤ)相(サン)(左議政)に申してやったのだ。子は授かり物と申すゆえ、そのように急かされても、すぐに授かるものではないと言うてやったら、あやつめ、流石にぐうの音も出なかったようだ。

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