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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

「見せたかったものって、なに?」
 キョンシルが問うと、ソンは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「これ」
 ソンが今まで立っていた場所から、すっと動いた。その後ろから現れたのは、ひと群れの撫子であった。
「撫子ね?」
「そう。宮殿の庭は無駄なくらい広いけど、撫子はあまりなくてね。咲いているのは、ここくらいのものなんだ」
 そこで、キョンシルは小首を傾げた。
「でも、何で私が撫子の花を好きだと判ったの?」
 ソンは咳払いをした。
「キョンシルについて判らないことなんかないんだよ」

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