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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

を腕に抱くこともできないほど弱っていた。それゆえ、滅多に逢うことも許されなかったしね」
 ソンは小さな息を吐き、一旦、言葉を切った。ひとしきり円い月を眺めてから話し始める。
「精神的には強い方だったが、やはり、病には勝てなかった。王であった父上(アバママ)は若くして心身を病まれ、恐らくは私が息子であったこともお解りではなかっただろう。義理の母大妃さまは、私をいつも眼の仇にし、挙げ句に何度も毒殺されかけた。この広い宮殿で、いつも私は孤独だった。そんな私にたった一人、愛情と関心を寄せてくれたのが、ホン内官だった」

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