
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥
「見てごらん」
ソンが空を仰いだ。キョンシルもそれにつられるように空を見上げる。
「私にとって、愛情とは、いつでもあの空を飾る月のように遠くて手に入らないものだった」
「ソン―」
「あそこに見える月はとても近くにあるように見える。でも、現実には、あまりにも遠い。キョンシル、私はもうずっと長い間、けして手には入らないものを求めて続けてきたんだ」
ソンはゆるゆると首を振る。
「私が求めるものは、あの月のように焦がれれば焦がれるほどに遠のいてゆくんだ。私を生んで下さった母上は病弱で、いつも床に伏していたから、幼い頃に母に抱かれた想い出もない。
ソンが空を仰いだ。キョンシルもそれにつられるように空を見上げる。
「私にとって、愛情とは、いつでもあの空を飾る月のように遠くて手に入らないものだった」
「ソン―」
「あそこに見える月はとても近くにあるように見える。でも、現実には、あまりにも遠い。キョンシル、私はもうずっと長い間、けして手には入らないものを求めて続けてきたんだ」
ソンはゆるゆると首を振る。
「私が求めるものは、あの月のように焦がれれば焦がれるほどに遠のいてゆくんだ。私を生んで下さった母上は病弱で、いつも床に伏していたから、幼い頃に母に抱かれた想い出もない。
