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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 今朝、キョンシルの殿舎は大騒動になった。というのも、女官見習いの少女が突然、何とも無残な姿となって帰ってきたのだ。
 この女官見習いはまだ十三歳だが、臨尚宮が話を聞いたところ、泣く泣く語ったという。
 その朝、少女は宮殿内の井戸で他の女官見習いの少女たちと洗濯をしていた。そこに温嬪に仕える若い女官がやってきて、自分たちが先に井戸を使うはずだったと難癖をつけ始めた。
―そんなはずはありません。私たちの中の誰も、温嬪さまの女官が先にあそこを使うだなんて話は聞いていませんでした。なのに、あちらの女官は、確かに前もって伝えているはずだというのです。

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