テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 もしかしたら、あの少女ではなくキョンシル自身がさんざん暴行されていたかもしれないのだ。
 恐らく、これは警告だ。
―こんな有様になるのが怖ければ、出しゃばるのもたいがいにするが良い。
 温嬪の冷たい金属質な声が聞こえてくるようだ。
 キョンシルの瞼に、狐を彷彿とさせる温嬪の顔が浮かぶ。見ようによっては美人といえるのかもしれないけれど、どこか冷たい印象を与える面にこれ以上はないというほどの嘲りの表情を浮かべていた。
 あの冷え冷えとした、まなざし。
 〝帰れ、帰るのだ。賤しい者は分相応な場所へと帰るが良い〟、そう語っていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ