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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 ソンは笑顔で返し、どこか嬉しげに言った。
「キョンシルは私のことを心配してくれるのか?」
「それは―ソンは国王さまでしょ。代わりのきかない大切な身体だもの」
「それだけ?」
「えっ」
 キョンシルが戸惑いの表情になると、ソンはずいと身を乗り出してきた。
「キョンシルが私の身を案じてくれるのは、私が国王だから? それだけなのか」
 その時、キョンシルは覚悟を決めた。もう、これ以上、長引かせてはならない。いつまでもどっちつかずの曖昧な態度をとり続けるのは、互いのために何一つ良いことはない。第一、別離を引き延ばせば引き延ばすほど、ソンの心に残る傷跡は大きくなるだろう。

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