側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男
その辺りもこれまでの彼とは違う。キョンシルがよく知るトスは、けして良い加減なその場限りの言葉で己れの言動を正当化したりはしないはずだった。
そもそも、二人の歯車が噛み合わなくなったのは、いつのころだろう。やはり、あのとき―キョンシルが国王俊(ジユン)宗(ジヨン)の許から市井に帰ってきたその日以来、トスの様子はおかしかった。
だが、キョンシルはトスに何も言うべき言葉を持たない。キョンシルは確かに俊宗の〝妃〟としてひと月余りを王宮で過ごしたものの、内実は見せかけだけの妃であり、俊宗との間には何も起こらなかった。そのことについてキョンシルはトスにちゃんと説明しようと試みたけれど、その度にトスは〝判っている〟と取り合おうとはしなかった。
そもそも、二人の歯車が噛み合わなくなったのは、いつのころだろう。やはり、あのとき―キョンシルが国王俊(ジユン)宗(ジヨン)の許から市井に帰ってきたその日以来、トスの様子はおかしかった。
だが、キョンシルはトスに何も言うべき言葉を持たない。キョンシルは確かに俊宗の〝妃〟としてひと月余りを王宮で過ごしたものの、内実は見せかけだけの妃であり、俊宗との間には何も起こらなかった。そのことについてキョンシルはトスにちゃんと説明しようと試みたけれど、その度にトスは〝判っている〟と取り合おうとはしなかった。