テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

 盛寿は悪辣な商人というわけではなく、それなりに情理を解する男ではあるが、商いにかけては少々強引なことをしてのける。それは、いわゆる豪商と呼ばれる商人なら特に珍しくはない。
 その分、他人から要らざる恨み辛みを買うことも多く、生命を狙われることもないわけではない。ゆえに、常にトスが身辺に控え、盛寿の身を危険から守っている。自らの身を挺しての仕事だけに、報酬もそれに見合うだけのものは受け取っていて、月琴楼のような上見世にも上がれるだけの賃金は貰っているというわけだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ