テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

「トスおじさんを怒らせるようなことを言ってしまったと後悔しているようだったけど」
 矢継ぎ早に言うと、やっとトスが応じた。
「―そうか」
「喧嘩したの?」
「まあ、そんなところだ」
 そこでまた会話が途切れた。本当にとりつく島もない。
「昨夜はいつもの酒場にずっといたの?」
 言ってはならないと思いながらも、つい口にせずにはいられなかった。
「―ああ」
 応えるまでにかなりの間があった。
 キョンシルは堪りかねて、トスの側に寄った。
「どうして何も言ってくれないの?」
「俺に何をどう言えというんだ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ