側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男
母とトスが男女の関係であった―、そのことをトス自身の口から聞いても、予想していたほどの衝撃はなかった。キョンシルも年が明けて十六になった。いつまでも何も知らない子どもではない。
いちばん哀しかったのは、トスが母との秘め事をまるで面白おかしい話のように娘のキョンシルの前で滔々と語ったことだった。何か大切なものを土足で踏みにじられたような、裏切られたような想いは否めない。
もしキョンシルが母の立場であったなら、亡くなった後に娘の前で肉体関係の有無を自慢げに話す男に失望もし、呆れもするだろう。
キョンシルの眼に溢れた涙がほろりとひと滴、頬をつたって落ちる。刹那、トスがハッとしたような表情になり、キョンシルから手が放れた。
いちばん哀しかったのは、トスが母との秘め事をまるで面白おかしい話のように娘のキョンシルの前で滔々と語ったことだった。何か大切なものを土足で踏みにじられたような、裏切られたような想いは否めない。
もしキョンシルが母の立場であったなら、亡くなった後に娘の前で肉体関係の有無を自慢げに話す男に失望もし、呆れもするだろう。
キョンシルの眼に溢れた涙がほろりとひと滴、頬をつたって落ちる。刹那、トスがハッとしたような表情になり、キョンシルから手が放れた。