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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

 トスが再びキョンシルの手首を掴み、力を込めて引き寄せた。不意を突かれ、キョンシルの華奢な身体は呆気なくトスの胸に倒れ込む。
「こう見えても、俺は俺なりに我慢してきたんだ。そろそろ、そのご褒美を貰っても良い頃合いだ」
 トスの手がキョンシルのチョゴリの前紐にかかった。手慣れた様子でするすると紐が解かれてゆくのを感じながら、キョンシルは涙に曇った瞳で薄汚れた天上をぼんやりと眺めていた。
―ご褒美ですって? 私はトスおじさんにとって、一体、何なの? ただ欲望を満たすための捌け口になる都合の良い女?

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