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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

―キョンシル。今更、何をと思うかもしれないが、崔家に戻ってくれぬか。儂は十六年前、大きな過ちを犯した。息子の切なる訴えを聞こうともせず、ただ一方的にチソンとお前の母親の結婚に反対した。ゆえに、あの子は屋敷を出てゆかざるを得なかったのだ。愚かな儂をもしまだ祖父と思うてくれるのなら、どうか孫として崔氏に戻り、家門を継いで欲しい。そなたの父や儂が果たせなかった夢を、そなたなら果すことができる。
 祖父一人が悪いわけではないのに、両親の仲をけして認めようとしなかった我が身の過去を悔い、かつて〝天下の崔イルチェ〟と呼ばれた朝廷の高官がキョンシルのような小娘に頭を下げたのだ。

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