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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

 トスが手を伸ばし、キョンシルの艶やかな黒髪に触れた。衝動的にピクリと身を竦ませた彼女を見、トスが笑う。
「何もしないから、そんなに怯えないでくれ」
「―ごめんなさい」
 キョンシルがか細い声で言うのに、トスはまた笑ってキョンシルの髪をくしゃっとかき回す。それは彼女がトスと知り合ったばかりの頃、よく十一歳のキョンシルにしてくれたのと同じ優しい仕草で。
 キョンシルは身体中に漲っていた緊張を漸く解くことができた。
「そなたが謝ることはない。反省しなければならないのは、大人げなく逸ってしまった俺の方だ」
 優しい瞳で見つめられ、キョンシルの頬がまた赤らんだ。

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