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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

 その時。入り口の扉の向こうで、ひそやかな声がした。
「お嬢さま、お嬢さま。私にございます。馬三福(サムボク)です」
 聞き憶えのある声に、キョンシルはトスと咄嗟に顔を見合わせた。
「お祖父さまに何かあったのかしら」
 キョンシルはすぐに起き出した。部屋をまろぶように走り、扉を開ける。
「夜分に申し訳ありません、お嬢さま」
 生真面目な執事はいつものとおり丁寧に頭を下げる。
 いつもなら好感の持てるその態度も今はもどかしい。キョンシルはすかさず訊ねた。
「お祖父さまに何か変わったことでも?」

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